▪️退職金の本質
退職金の本質は、賃金の後払いです。
この本質的な効果と併せて、従業員の定着率の向上や長期勤務の報奨金としての役割も付帯的に担っています。
いわば、ご褒美的な要素の強い退職金ですから、法的に退職金の支払い義務があるわけではありません。
法的義務はありませんが、経営者の意見を聞いてみると、やはり長く働いてもらったことに対する慰労金として退職金を払ってあげたいという意見は多いようです。
▪️退職金制度の法的義務
上記でお話ししたように、退職金の支払い自体に法的義務はありません。
しかし、従業員が10名以上いる企業で退職金制度を設ける場合、就業規則においてその支給を明文化しなければなりません。
さらに、パートタイマーを雇用する際には、雇入時に労働条件通知書等で退職金の有無を明記する必要があります。
退職金自体に支払いの義務があるわけではないので、退職金を支給するかしないかは会社の自由ですが、退職金制度を就業規則や退職金規定として定めると、その時点から退職金の支給が会社の義務になり、従業員には退職金を受け取る権利が発生します。
時々、退職金制度を作らずに退職者が出た時点での会社の業績により退職金を支給しているという企業を目にしますが、これはとても危険な支給方法です。
仮に、業績不振の年に退職者が出て退職金を支払えなかった場合、退職金を受け取れなかったことに不服を感じた社員が訴えを起こすと、これまでの退職金支払いが慣例であるとみなされ退職金の支払い義務があると判決される可能性もあります。
せっかく好意を持って支払ってきた退職金も、たまたま業績不振で退職金を受け取れなかった退職者や、前回の退職者より受け取り額が少ないと感じた退職者とトラブルになってしまっては、いたたまれませんよね。
退職金規定を作成せずに退職金を支給している会社では、退職金のメリットを活かしきれていないばかりでなく、せっかくの敬意がトラブルの原因となってしまっては本当に残念です。
せっかく退職金を支給するのですから、トラブルが起こらぬよう、しっかり退職金規定として明文化し従業員に周知させましょう。
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